出生前検査の種類と方法
検査の方法(非確定的検査)
それぞれの検査が対象とする疾患は限られています。またこれらの検査だけで赤ちゃんの診断を確定することはできないので,非確定的検査とよばれます。1)ソフトマーカー
超音波検査で、赤ちゃんの染色体疾患と関連する所見をソフトマーカーといいます。例えば、首の後ろの厚み(NT)を測る検査などです。難しい点として、病気がない赤ちゃんでもこれらの所見は認められますので、所見がある=赤ちゃんが病気を持つ、とならないことです。また検査には至適時期があり、計測も慎重に行われる必要があります。ソフトマーカーの所見が認められ、ご夫婦が希望された場合、より確定的な検査を考慮していくことになります。
例)NT計測
赤ちゃんのサイズ(頭臀長 CRL)が45mm〜84mmの間(妊娠11週0日から妊娠13週6日)に行います。首の後ろの厚み(問題のない赤ちゃんでも認められます)がより厚い赤ちゃんの中には病気を持つ赤ちゃんが含まれることが知られていますので、赤ちゃんの体勢などに十分注意しながら慎重に計測します。
35歳の妊婦さんが受検した場合、陰性適中率(検査で陰性と判断され、実際に疾患を持っていない確率)は99.9%ですが、陽性適中率(検査で陽性と判断され、実際に疾患を持つ確率)は6−7%です。つまり陽性、と判断されても本当に疾患があるかどうかはより詳細な検査を受けないと分からないことを意味しています。可能性のある赤ちゃんの疾患としては、染色体疾患や遺伝子疾患、心疾患などがあります。染色体疾患の有無については、羊水検査(後述)や絨毛検査(後述)といった検査が、心疾患については超音波検査などで調べます。
2)母体血清マーカー検査
1.妊娠初期に行うもの:コンバインドテスト(妊娠11週頃)
NT計測(前述)と採血検査を組み合わせたものになります。採血では血清hCG値・PAPP-A値(pregnancy-associated plasma protein A)を測定し、両者を組み合わせて赤ちゃんが21トリソミー、18トリソミーを持つ確率を算出する検査です。
2.妊娠中期に行うもの:クアトロ検査(妊娠15週頃)
採血を行い、hCG、AFP(alpha fetoprotein)、inhibin A、uE3 (unconjugated estriol:非抱合型エストリオール)値を測定し、母体年齢による固有の確率にかけ合わせて赤ちゃんが21トリソミー、18トリソミーおよび神経管開存症である確率を例えば1/500、のように算出します。この算出された確率が基準の値(カットオフ値)よりも高いと「陽性」、低いと「陰性」と報告されます。疾患によって異なりますが、例えば21トリソミーの場合、陽性的中率は2-3%、陰性的中率は99%と報告されています。つまり、1)のソフトマーカー検査と同様に「陽性」と報告されても本当に21トリソミーを持つかどうかはより詳細な検査を受けないと分からないことを意味しています。
診断を確定するためには羊水検査(後述)や絨毛検査(後述)が必要になります。この検査は妊娠15週〜17週頃までに受けることが推奨されており、採血から結果がわかるまで約2週間を要します。
3)非侵襲的出生前検査:NIPT
対象疾患は、21トリソミー、18トリソミーおよび13トリソミーで、現時点での検査対象者は、自身の年齢を心配する妊婦さん、以前に染色体疾患をもつ赤ちゃんを妊娠もしくは出産したことのある妊婦さん、のようにいくつか規定があります。妊娠10週頃から受検することができ、採血から検査結果判明まで約2週間、検査費用は施設によってことなりますが総額20万円前後です。検査結果は「陰性」「陽性」のように判定され(まれに「判定保留」という結果が出る場合がある)、それぞれの疾患をお腹の中の赤ちゃんが持つ可能性が高そうかどうかを調べます。例えば35歳の妊婦さんが21トリソミー陽性と判定された場合の陽性適中率は80%です。つまり10人に2人は「陽性」と判定されても赤ちゃんは21トリソミーを持たない、ということになります。そのため、診断の確定には、羊水検査(後述)や絨毛検査(後述)が必要です。一方、陰性的中率は99.9%とされていますが、100%ではありません。「判定保留」の場合は再度、採血検査を行うか、確定検査に進むか、検査自体をやめるかなど考える必要があります。