最近、高齢妊娠・出産がメディア等でよく話題になります。高齢妊娠・出産には大きく三つの問題があります。妊孕性の低下(卵子の老化)、流産の増加(偶然生じる染色体変化の増加)、それと出産時の危険性です。
最初の二つについて説明します。母親から生まれ出たときのヒトは百万個の卵子を持っています。その数は次第に減少しますが、残った卵子は着実に成熟し、分裂の途中でいったん眠りにつきます。やがて思春期が来ると卵子は眠りから覚めて排卵します。排卵した卵子が精子と出会い、それを受け入れると妊娠は成立します。この間に新しい卵子はつくられることがありません。精子とはそこが違います。老化した卵子は染色体の問題が起こりやすくなります。染色体には22対44本の常染色体と2本の性染色体があります。常染色体は大きい順に1番から22番まであり、いずれかの染色体にいったん不分離が起こると、そのほとんどは流産します。高齢妊娠で流産率が高い原因は染色体不分離なのです。ただし生命への影響の少ない常染色体(遺伝子の数も少ない)である21番、18番および13番の不分離は流産を免れることがあります。ちなみに21番染色体の不分離で生じるのがダウン症候群です。