不妊とは、妊娠を望む健康なカップルが避妊をしないで性交渉(セックス)をしているにもかかわらず妊娠しないことです。「1年」という期間で定義するのが一般的です。不妊のカップルは約10組に1組とも、5組に1組とも言われています。不妊の原因は、男性側(約半数)、女性側(約半数)です。両方にある場合も少なくありません(10-25%)。不妊症の治療は原因や経過、さらにカップルの希望に応じてさまざまなステップがあります。
不育とは、妊娠するが流産を繰り返したり、死産や生後すぐに赤ちゃんが亡くなってしまうなどして、なかなか赤ちゃんを得ることができないことです。妊娠初期の流産は、1回の妊娠の15%くらいに起こり、妊娠したことのある女性の約4割が経験すると言われていますが、これを様々な理由で繰り返す状態です。不育症で悩むカップルは全体の5%くらいという統計があります。不育症では、赤ちゃんに偶然生じた染色体変化以外の原因であることも多く、原因がわからない場合もあります。
そろそろ妊娠を、と思ってもなかなか授からないこともあるのです。治療には時間やお金がとてもかかることもあるし、最終的にかならず妊娠することが決まっているわけでもなく、いろいろな面で大きな負担を感じることもあります。治療と仕事の両立に悩んだり、ともに向き合うべきカップル同士で温度差やすれ違いを生じてしまったりするかもしれません。カップルには、身体だけでなく心のケアも大切です。また、行政からの支援制度*を利用できないかも調べてみましょう。
*2022年度から多くの不妊治療を公的医療保険の適応にする方針が示されています
コラム:
女性の年齢によって、妊娠しやすさや周産期予後に影響が考えられてます。
このグラフは、生殖補助医療(ART)をうけた人の妊娠率、生残率、流産率を示したものです。妊娠率/総ET(胚移植:対外受精で作成し、培養した受精卵を子宮内にもどすこと)を見てみると、26歳の女性では45%であった妊娠率は、徐々に下がりはじめ、さらに30代後半になると大きくさがり、40歳では30%を切ります。反対に、流産率は年齢とともに上昇します。26歳時はおよそ10%ですが、40歳ではおよそ20%になります。このグラフは、生殖補助医療をうけた人のものですので、すべての女性でおなじことがいえるわけではありませんが、年齢があがるほど妊娠しにくくなり、流産しやすくなるという傾向は同じと考えられます。
これらの情報も踏まえて、それぞれのライフプランを検討しましょう。
日本産科婦人科学会 登録・調査委員会報告 ARTデータブック2019年版