妊娠中に受ける検査の概略
妊娠がわかったら母体の健康とともに、おなかの赤ちゃんが順調に成長しているのか確認するために、定期的に妊婦健康診査を受けることが推奨されています。妊婦健康診査は、妊娠初期から妊娠23週までは4週間に1回、妊娠24週から妊娠35週までは2週間に1回、妊娠36週から出産までは週1回の受診がすすめられます。妊娠期間中の受診回数は合計14回くらいになります。
毎回の妊婦健康診査では、健康状態の把握、検査計測(子宮底長、腹囲、血圧、浮腫、尿検査:糖・蛋白、身長・体重)および保健指導が行われます。そして、妊娠時期に応じて、血液型検査、血糖検査、子宮頸がん検診、感染症検査(B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、HIV抗体、梅毒血清反応、風疹ウイルス抗体、性器クラミジア、HTLV-1抗体、B群溶血性レンサ球菌など)、ならびに超音波検査が実施されます。妊婦健康診査には、公費による補助制度があります。妊娠がわかったら、お住まいの市町村へ「妊娠届」を出して「母子手帳」を取得してください。
また、妊娠中に赤ちゃんの染色体異常などの遺伝的問題について知りたいとき、出生前遺伝学的検査をうけるという選択肢があります。出生前遺伝学的検査の方法には、ソフトマーカー(nuchaltranslucency:NTなど)の評価、母体血清マーカー検査、あるいは母体血を用いた胎児染色体検査(non-invasiveprenataltesting:NIPT)、羊水検査、絨毛検査があります。
出生前遺伝学的検査は、すべての妊婦にとって必ずしも必要な検査ではありません。「出生前診断を受けない」という選択肢もあります。妊婦とそのパートナー(以下、カップル)は妊娠している赤ちゃんのことを考えて、出生前遺伝学的検査を受けるのか否か判断し、検査後も結果に伴う様々な選択を自己決定しなければなりません。出生前遺伝学的検査は人工妊娠中絶につながる可能性もあり、とくに赤ちゃんが罹患児と診断されたとき、カップルは短期間のうちに自身ではなく赤ちゃんの生死に関わる重大な選択を迫られます。したがって、出生前遺伝学的検査では、カップルが検査前後の遺伝カウンセリングを通じて、検査の意義、倫理的問題、検査の精度と限界、検査結果への対応などについて理解することが必要とされます。